東京高等裁判所 昭和40年(う)494号 判決 1965年6月17日
主文
原判決を破棄する。
本件を台東簡易裁判所に差戻す。
理由
<後略>職権で調べると、本件記録には、原判決の言渡調書が編綴されていない。もつとも、昭和四〇年二月一三日原審第三回公判調書中「指定告知した次回判決宣告期日昭和四〇年二月二〇日午前一〇時」なる旨の記載があること、原判決書冒頭欄外に「昭和四〇年二月二〇日判決宣告」なる旨の記載があつてこれに裁判所書記官野口利平の記名押印があることおよび原審弁護人日野勲の控訴申立書中に「被告人に対し台東簡易裁判所が昭和四〇年二月二〇日言渡した被告人を第一の罪につき懲役四月に、第二の罪につき懲役八月に処する旨の判決は不服でありますので茲に控訴の申立を致します」なる旨の記載があることに当審証人野口利平の供述を併せて考えれば、原判決が、昭和四〇年二月二〇日被告人に対して言い渡されたことだけは認められるが、前記のように言渡調書が存在しないので、右言渡が果して適法な方式を履践してなされたものか否かを証明し得ない。されば、原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続に法令の違反があるというのほかなく、原判決は既にこの点において破棄を免れない。
<後略>(河本文夫 吉川由己夫 清水春三)